◆◆イギリス女性史研究会・第26回研究会◆◆

 

■日時 6月11日(土) 14:00~17:00

場所 甲南大学(岡本キャンパス) 5号館2階 523教室

(最寄駅 阪急 岡本駅、JR摂津本山駅 徒歩10分)

交通アクセス http://www.konan-u.ac.jp/access/

5号館は正門を入って、まっすぐ突き当り、右手の新しい建物。会場は2階です。

キャンパスマップ http://www.konan-u.ac.jp/access/campus.html

 

■プログラム (司会者は後日お知らせいたします)

14:00-14:05 代表挨拶、事務連絡

14:05-14:20臨時総会

14:20-15:30 第一報告 中込さやか氏「イングランドのミドルクラス向け女子教育と家庭科関連科目群―マンチェスタ女子ハイ・スクールの事例 1894~1914―」

15:30-15:50休憩

15:50-17:00 第二報告 真保晶子氏 「18・19世紀イングランドの住居・ジェンダー・時間 - 個人と家族を超えた物質空間の歴史への試論」
18:00— 20:00  懇親会

 

■懇親会

6月11日(土) 18:00~20:00

会費 4500円

会場 バー・ラフィナート(JR芦屋駅前)

http://raffinato-ashiya.com/b/access/

(JR芦屋駅の目の前なので、お帰りが便利です。新大阪まで新快速で20分。三ノ宮まで新快速で6分。新神戸まで乗り換えで25分程度)。

 

【現地連絡先】 髙田携帯 090-1876-0354

 

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今回からウェッブ上で懇親会の出欠の確認をすることになりました。6月3日(金)までに、下のURLから「研究会・懇親会出欠確認フォーム」に必要事項をご記入し、お手続きください。直前の取り消しの場合は、キャンセル料が発生しますのでご注意ください

https://jwhn.org/wp18/study/form.html

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■報告要旨

◆第一報告

中込さやか氏「イングランドのミドルクラス向け女子教育と家庭科関連科目群―マンチェスタ女子ハイ・スクールの事例 1894~1914―」

イギリス女子中等教育史は、1840年代以降、ミドルクラス女子を対象として大学教育と連動したアカデミックな教育が発展した点に着目してきた。その中で、女性校長ら改革者達が、ミドルクラス男子と同等のカリキュラムを志向したと同時に、女性らしさの維持や涵養にも苦心した点はよく知られる。家庭科関連科目群は1860年代から基礎学校で労働者階級女子の必修科目として教えられていたが、女子中等教育の追求した上記の2点に反するとされ、19世紀後半の女子中等教育では女性の嗜みであった裁縫(Needlework)が教えられるにとどまった。しかし、20世紀初頭に女子中等教育人口が拡大した結果、大学進学を目指さない大衆向け女子中等教育への対策として家庭・就職に向けたコースが導入されていった。家庭に入る生徒向けのコースは、1900年にマンチェスタ女子ハイ・スクール(MHSG)に設立された家政学(Housewifery)コースが嚆矢とされる。中央教育行政機関である教育院がジェンダー別カリキュラムを推進した結果、1910年代までには女子中等学校への家庭科の導入が実現したが、女子中等学校の校長は家庭科を「学力と出身社会層に劣る生徒向けの科目」と見なしていたという。

しかし、学校史料からは、19世紀後半に女子中等学校とアカデミックなカリキュラムが整備される中、家庭科関連科目群が常にカリキュラムの一部を占めていたことが分かる。19世紀後半にアカデミックな女子中等教育の実現を主導したフランシス・メアリ・バスは、1850年にノース・ロンドン・コリージェト・スクール(NLCS)を設立して以来、裁縫、家事経済(Domestic Economy)、調理(Cookery)、婦人服仕立(Dressmaking)等の様々な科目を、時代状況に応じて提供していた。二代目校長ソフィ・ブライアントの元では、1907年に家事技術(Domestic Arts)コースが設立された。また、MHSGでも、校長バーストールが1900年に家政学コースを設立する前の1890年代から、初代校長エリザベス・デイによって調理、婦人服仕立等の課外授業が行われていた。従来の研究史が、アカデミックなカリキュラムの発達や、教育院と全国女性校長協会の家庭科導入をめぐる上からの教育決定に着目してきたため、学校現場での実践を学校史料から検証する視点が不足していたと言える。

本報告では、1894~1914年のMHSGにおいて、家庭科関連科目群として何が、誰に、どのように教えられたかを学校史料から明らかにしたい。同時代の女子中等教育が追求したアカデミックなカリキュラムと女性らしさの涵養や、大衆向け女子中等教育にむけた変化はどのように反映されたのか。また、当時のカリキュラム決定には校長の意思が強く反映されたため、初代校長デイと二代目校長バーストールの教育観にも着目する。史料の中でも学校報告書、学校雑誌、生徒名簿などを中心的に分析する。

◆第二報告

真保晶子氏 「18・19世紀イングランドの住居・ジェンダー・時間 - 個人と家族を超えた物質空間の歴史への試論」

住居とジェンダーの関係についての研究はイギリス史の中でも2000年代後半から盛んになり始めた。特に、19世紀後半以前の時期に、既婚女性が家庭内で家具調度品を決定する上でどの程度主導権を持っていたかについて議論が深まってきた。コモンローのもと、既婚女性は夫の保護下にあるとされ、公式には経済活動が制限されていたからである。デボラ・コーエンのHousehold Gods (2006年)が既婚女性の財産に関する法整備が整う1880年代以前における女性の家庭内装飾への主導権を過小評価するのに対し、アマンダ・ヴィッカリのBehind Closed Doors (2009年)は18世紀後半から19世紀前半を例に、女性が様々な方法で家庭内装飾へ貢献してきたことを示す。しかし、ヴィッカリの著作では「手作りの品」や「インテリアの修繕」も含め、家庭内装飾に関わる女性の行動は「古典的な秩序正しさ」に従い、「妻の貞淑さを示すこと」の表れとみなされる。そこでは既婚女性が自ら望む快適な住居空間を実現するために家庭の内外で直面した軋轢、交渉、奮闘、さらには物や空間に対する「妻」の立場を超えた視点というものは陰に隠れてしまっている。

これに対し、本報告では、拙著Furniture-Makers and Consumers in England, 1754-1851: Design as Interaction (2015年)で扱った素材に新たな史料を加え、女性の住居・家具調度品への関わりをより積極的かつ多面的なものとしてとらえる。女性用家具の出現、デザイン・パターンブック、家事手引書などをもとに、18世紀後半から19世紀後半までの時代背景を概観した後、住居の維持と家庭内装飾における女性の積極的な役割を、個人・家族のみならずそれらを超えた大きな歴史の一部としてとらえていた女性の視点を例示し、物質空間としての住居の歴史に新たな方向性を探りたい。

第一に女性の家具調度品の購入における主導権について、家庭の「外」、つまり家具製造会社との交渉や提案を家具製造会社の会計簿および書簡を例にしながら考える。第二に、家具製造会社の会計簿および家族間の書簡などから女性顧客のライフサイクルと住居・家具調度品の購入のタイミングの関係を追いながら、個人の歴史と重なる住居の歴史への視点を提示する。一方で、自伝、家の修理の記録などを見ると、家具調度品を長期的に使い続けたり家を修理した女性の意思の裏側には個人や家族の所有物という枠組みだけでは説明しきれないものがあるように思える。報告の最後に、上記史料をもとに、個人や家族を超えた歴史の一部として家具調度品の長期的使用と家の修理をとらえていた女性の視点を例示し、「個」を超えた物質空間としての住居の歴史を試論する。

 

以上

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イギリス女性史研究会(JWHN) 事務局 (田村)
jwhn_adm@yahoo.co.jp