■日時:2011年12月11日(日)13:00~17:45
■場所:青山学院女子短期大学 本館3階 第一会議室
◇最寄り駅からの案内図
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◇青山キャンパス案内図
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*ピンク色の部分が短大キャンパスです。
■プログラム
【第17回研究会:シンポジウム「女性のプロフェッションと社会変容」】
◇代表挨拶(13:00~13:05)
◇趣旨説明(13:05~13:15)
◇第1報告(13:15~13:55)
出島有紀子「差異化と共犯――ヴィクトリア朝期における女性医師の専門職化とその功罪」
◇第2報告(14:00~14:40)
三井淳子「親和か対立か――世紀転換期イギリスにおける女性ジャーナリストの存在意義」
◇第3報告(14:45~15:25)
林田敏子「プロフェッショナルかスペシャリストか――第一次世界大戦期イギリスにおける女性警察」
◇コメント1(15:45~16:00)
佐藤繭香(女性参政権運動の視点から)
◇コメント2(16:00~16:15)
永島剛(福祉プロフェッションの視点から)
◇全体討論(16:15~17:15)
司会:香川せつ子
【2011年度定期総会】17:15~17:45
*総会終了後、18:00より懇親会を開催する予定です。
【シンポジウムの趣旨】
女性のキャリア形成、職場における方針決定過程への参画は、21世紀の今日もなお模索の続く課題であり、女性史研究の重要テーマといえるでしょう。本シンポジウムでは、19世紀後半から20世紀前半にかけての「女性のプロフェッション進出」という新たな動向が、イギリス社会全体にどんな影響を与えたのか、三人の方からの報告を基に論議を深めていきたいと思います。
周知のように、19世紀後半のフェミニズム運動は、女性の雇用拡大、女子教育改革、女性参政権の獲得を三つの柱として、ミドルクラス女性の社会進出を推進しました。当時、高度な教育を受けた女性が、そのレスペクタビリティを保持したまま参入できる職業には、何があったのでしょうか。1914年のイーデス・モーリーによるフェビアン協会調査報告は、「女性のプロフェッション」として、教職、医業、看護、衛生監督官、公務員、秘書・事務、俳優の七つを挙げ、その地位や報酬を論じています。その後第一次世界大戦の勃発により、女性の職業地図は塗りかえられ、また1919年の性差別禁止法は、弁護士という伝統的エリートの職業への女性の参入を可能にしました。
本シンポジウムでとりあげるのは、警察、医師、ジャーナリストという三つの職業です。女性とプロフェッションをめぐっては、各々の職業のプロフェッションとしての形成過程とそこでの女性の位置づけ、女性が活躍した職域と地理的空間、男性同業者との利害関係や軋轢、プロフェッション内部における序列化と棲み分け、政治的社会的な支援と阻害の要因など、さまざまな論点が浮上するでしょう。三者三様の特殊性と共通性、それぞれの報告者の視点を交差させるなかで、「女性のプロフェッション進出」という歴史的事象が、同時代のイギリス社会の何を反映したものなのか、またイギリス近現代史の流れにどのような影響を与えたのかという大きな文脈につながるダイナミックな論議を、ご参加の皆様とともにつくり出していきたいと考えます。(香川せつ子)
<各報告の要旨>
【出島報告】
「差異化と共犯――ヴィクトリア朝期における女性医師の専門職化とその功罪」
19世紀後半に男性と同等の医学教育を受けて医師登録簿に名を載せるという当然の権利を要求し、「レディ」に「身体の知」を与えまいとする医学教育機関の反発に遭いながらも女性に医師の道を開いた人々の功績は強調しすぎることはない。しかし医学士号を持ち医師登録された女性医師の誕生は女性の医療提供者の中に「資格のある者」と「資格のない者」の差異を作りだし、後者が指導あるいは排除の対象となっていく。また国内では患者も診療内容も限定されていた女性医師に魅力的なフィールドを提供し、女性医師の専門職化に大きな役割を果たした植民地インドにおいても女性医師はヒンドゥーの助産婦や医師資格のない医療ミッショナリという「差異化すべき」対象と出会う。女性の身体という最も私的な領域にまで西洋医療を浸透させる使命を負った女性医師は、医師の専門職や帝国主義と共犯する形で国内外の女性の患者化と既存の女性医療提供者の序列化を推し進めることになったのである。
【三井報告】
「親和か対立か――世紀転換期イギリスにおける女性ジャーナリストの存在意義」
文筆業を生業とする女性は18世紀に増加し、19世紀にはリスペクタビリティを損なわない女性のプロフェッションのひとつとして認知されていた。だが、医師のように資格取得によって認められる類の職ではなく、プロとアマの境界線が曖昧で、出版媒体との契約条件は人により落差が激しいなどエージェントとして薄弱であった。本報告では、1894年に女性ジャーナリスト協会が発足した前後約20年間に焦点をあて「家政」など女性らしい分野から業界に参入した女性の活動例、同時代の新聞や小説に描写された女性ジャーナリスト像を考察することをつうじて、彼女たちの存在が社会にどのような影響を与えたのかを探りたい。
【林田報告】
「プロフェッショナルかスペシャリストか――第一次世界大戦期イギリスにおける女性警察」
警察は、高い身体能力を要するとの理由で、女性の参入がもっとも遅れた職業の一つである。こうした「男の聖域」に女性が進出する契機となったのは、第一次世界大戦の勃発であった。大戦の勃発とともに発足したヴォランタリ女性警察は、公道や遊戯施設、陸軍キャンプ地などで秩序維持活動に従事し、一定の成果をあげる一方、ジェンダー秩序を乱す存在として絶えず不信の目にさらされた。本報告では、戦時という特殊条件の下で産声をあげた女性警察が戦後に陥ったジレンマのなかに、警察という特殊空間におけるジェンダー問題の本質をさぐるとともに、女性の参入が警察のプロフェッショナル化に与えた影響について考察していきたい。