【シンポジウム】「身体とジェンダー -19世紀から20世紀にかけてのスポーツとファッションを媒介にー」

■ 日時
12月1日(日)13時~16時50分
麗澤大学東京研究センター (新宿アイランドタワー 4階)

■ 報告
第21回の研究会は、2013年12月1日(日)に麗澤大学東京研究センター(新宿アイランドタワー4階)にて開催し、「身体とジェンダー―19世紀から20世紀にかけてのスポーツとファッションを媒介に―」というテーマで、3名の研究者による発表が行われました。

第1報告の池田恵子氏は、「エリザベス・ヒューズの『女性の身体運動』を巡って―日英比較女性スポーツ史の試み―」と題し、ジェンダーとスポーツの観点から、1901-02年のヒューズの訪日と、帝国主義を背景にした「良妻賢母」の女子中等教育に焦点を当て、ブルーマーへの衣服改良を単線的な解放のプロセスと捉えず、複層的なジェンダー空間として再構築しました。

第2報告の眞嶋史叙氏は、「ボディとグローバル経済―なにがファッションを動かしてきたのか」という題で、19世紀のボディラインとファッションの変化を、需要側と供給側という2つの側面から鋭く考察し、女性の体型の変化、階級による差異化と同一化を挙げ、一方で、テキスタイル産業の技術革新と経済のグローバル化による生地とドレスラインの変遷を、丹念に解き明かしました。

コメンテーターの塚本有紀氏は、女性の余暇がアウトドアへと広がっていく中で、アーチェリーや自転車などが女性らしさを損なわないスタイルで提案されたこと、また教育現場では生徒の身体測定が詳細に記録され、学校医や雑誌が科学的根拠に基づく指導をして、適切なファッションや栄養について説いていたことを、具体的事例をもとに浮かび上がらせました。

フロアから次々とあがる質問に対し、3人の発表者が明快な回答をして議論が深まり、イギリス女性史研究会における分野の広がりを再認識する、刺激的な研究会となりました。総会では、2014年に創刊される会誌『女性とジェンダーの歴史』についての報告があり、アイランドタワー1階のイタリアンでの懇親会は、和やかで楽しいひとときとなりました。

JWHN2013Dec1-1 JWHN2013Dec1-2 JWHN2013Dec1-3


第20回研究会の報告

第20回の研究会は、2013年6月29日(土)に名古屋市立大学滝子キャンパスにて開催し、3名の研究者による発表を行いました。

中條真実氏は、「第二次世界大戦と女性の 「声」と「主体性」—イアン・マキューアン著『贖罪』 における「語り」の問題」と題した発表で、第二次世界大戦期において女性たちがどのように主体性を確保していこうとしたかを歴史的な状況と同時にマキューアンの小説のなかに探りました。

また、中込さやか氏は「1870~1910年代イギリスの女子ハイ・ スクールにおける家庭科の導入: ノース・ロンドン・コリージェト・スクールの事例」において、イギリスの名門女子ハイ・スクールにおいて家庭科がどのように導入され、カリキュラムのなかで位置づけられていたかを綿密な調査に基づいて明らかにすることで、女性と家庭の関係性についての教育史からの考察を提出しました。

第3報告の飯島亜衣氏は、「18〜19世紀イギリスにおける科学と女性〜 サイエンティフィック・レディの活躍〜」と題して、scienceが近代的な「科学」として確立していく過程で女性が果たした役割を具体的な事例をもとにして詳細に跡づけてくれました。

いずれの報告も刺激的であり、いつもながらの活発な質疑応答を喚起することになりました。女性史の視点からな歴史へのあらたな切り込み口を提示した研究会になりました。

 

総会では、本研究会で冊子体のジャーナルを発刊することが決定され、会員相互の学術的交流と同時に外部への研究成果の発信がジャーナルを通して可能になっていくことになります。会員のみなさんからの積極的なご投稿をぜひお願いいたします。

懇親会は桜山の居酒屋にていつものように和気あいあいと議論とおしゃべりで盛り上がりました。

まだ研究会に関心がありながら、まだいらっしゃっていない方はぜひ一度足をお運びください。

june2

june1